ミシェル・ダルベルト(ピアノ) 〜ドビュッシー前奏曲集〜

洗練された芳香と奥深さを味わう

C)Caroline Doutre

 その佇まい、存在感そのものがエレガントでインテリジェンス漂うパリ出身のピアニスト、ミシェル・ダルベルト。日本では2006年に放映されたNHKのテレビ番組『スーパーピアノレッスン』の講師、またラ・フォル・ジュルネ音楽祭の出演などを通じ、その芳しく情感豊かな音楽は、広く聴衆を魅了してきた。指揮者としても、室内楽奏者としても、熱心な演奏活動を続けてきた彼は、現在パリ国立高等音楽院の教授として、若い世代にその芸術を伝えている。録音ではシューベルトのピアノ作品全集で注目を集めた印象が残るが、近年ではドビュッシー、フォーレ、フランクといったフランスのピアノ作品集をそれぞれ15年、17年、19年とコンスタントにリリースしている。

 そんなダルベルトが20年の来日公演で聴かせるのは、ドビュッシーの前奏曲集全曲である。第1巻と第2巻、合わせて24曲からなる作品だ。形式的な縛りのない、作曲家の独創性があますところなく発揮される前奏曲。ドビュッシーの前奏曲は、その一曲一曲が見事なまでに自由な世界観を提示する。詩人との深い交流があったドビュッシーらしく、「雪の上の足跡」「亜麻色の髪の乙女」「月の光が降り注ぐテラス」「ヴィーノの門」など、自然や人物、建築物などを示すタイトルも美しい。ダルベルトの繊細で奥深い解釈と、ニュアンスとエスプリに富んだ豊かなタッチが紐解く、まるで詩集のようなピアノ作品を、じっくりと味わいたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年12月号より)

2020.2/5(水)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp/