英国最高の知性派ピアニストがベートーヴェン後期の深淵に挑む
スコットランド生まれのピアニストであるスティーヴン・オズボーンは、クララ・ハスキル国際コンクール、ナウムブルク国際コンクールで優勝し、その名を世界に知らしめた。現在ではベルリン・ドイツ響やミュンヘン・フィル、ウィーン響など、世界の名だたるオーケストラと共演を重ねると同時に、コンセプト性の強いリサイタルで世界中から注目を集めている。来日も多く、2017年に行ったメシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」の全曲演奏は非常に大きな話題となった。
幅広いレパートリーを誇る彼が今回の来日で演奏するのは、ベートーヴェンの後期3大ソナタ。ベートーヴェンが生涯取り組み続けた作品ジャンルであるピアノ・ソナタの最後を飾る3曲であり、演奏にはピアニストとしてのあらゆる資質が求められる。研ぎ澄まされた技巧はもちろん、ロマン派にも通ずる感情豊かな表現と、緻密な構成による作品を見通す構築力の高さだ。ピアニストにとって非常に高い壁となって立ちはだかる曲だが、オズボーンはこの3曲の演奏に必要なすべてを兼ね備えたピアニストである。それが今回のリサイタルによって改めて示されることだろう。今年ディスクをリリースしたばかりということもあり、彼が一番熱く取り組んでいる作品をどう聞かせてくれるか、期待が高まる。イギリスはもちろん、ヨーロッパでも最も注目を集めるピアニストの一人である彼が紡ぎ出すベートーヴェンの世界をぜひこの機会に味わってほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年10月号より)
2019.11/1(金)19:00 トッパンホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
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