アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

闘将が描く近代ロシアの管弦楽法の極み

アレクサンドル・ラザレフ ©平舘 平

 今年4月のヨーロッパ・ツアーで大成功を収め、首席指揮者インキネンの2020年バイロイト音楽祭《ニーベルングの指環》デビューが決定するなど、ますます意気上がる日本フィル。その意気と演奏水準向上の立役者である桂冠指揮者兼芸術顧問アレクサンドル・ラザレフの存在も当然見逃せない。今年5月には何と歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》で驚嘆の名演を展開し、楽団のキャパを拡大。サウンドの圧倒的な容積とパワー、凄絶で高揚感に充ちた表現、徹底的なリハーサルと相まっての緻密な構築を併せ持つその演奏は、毎回が聴き逃せない“宝”と言っても過言ではない。

 このところ彼は東京定期に年2回登場し、秋公演では「ラザレフが刻むロシアの魂SeasonⅣ グラズノフ」に取り組んでいる。来る11月定期の1曲目は、17年と16年に快演を残した第4、5番と共に中期三部作を形成する交響曲第6番。同曲は、ダイナミックな両端楽章に、変奏曲の第2楽章、間奏曲の第3楽章が挟まれた、グラズノフには珍しいほど多彩な作品で、彼ならではの管弦楽法の妙も存分に味わえる。これはグラズノフの交響曲の中でも“ラザレフいち押し”というから期待大!

 後半はストラヴィンスキーの「火の鳥」。しかも組曲ではなく全曲版だ。4管の大編成で奏されるロシアのダイナミズムと精緻な綾が融合した音楽は、ラザレフの特質発揮にピッタリ。18年に同作曲家の「ペルセフォーヌ」で魅せた、抒情的にして色彩感溢れる雄弁なドラマを再び耳にすることができるに違いない。圧巻の音楽体験必至の本公演、むろん必聴だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年10月号より)

第715回 東京定期演奏会 
2019.11/1(金)19:00、11/2(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://www.japanphil.or.jp/