トーマス・ツェートマイヤー(ヴァイオリン/指揮)& ムジークコレギウム・ヴィンタートゥーア

鬼才が伝統のチェンバー・オーケストラを弾き振り!


 「現代ヴァイオリン界の鬼才」と「スイス最古の歴史を誇るチェンバー・オーケストラ」。一見不思議な組み合わせだが、公演ごとに充実の成果を挙げ続け、欧州で注目を集めているという。そして今秋には、トッパンホールでそのパフォーマンスを体験できることになった。

 前者はトーマス・ツェートマイヤー。いわずと知れた孤高のヴァイオリニストで、同ホールではパガニーニやバッハの無伴奏作品で凄演を繰り広げている。しかし、彼は近年指揮活動にも力を注いでいて、今回はソリストも務めるものの、指揮者という立場に軸足を置いてのステージとなり、その指揮ぶりが話題になりそうだ。とはいえ、やはり彼のヴァイオリン演奏は見逃せず、しかも演目はベートーヴェンの協奏曲。この温かい名作を、ツェートマイヤーが弾き振りでどう構築するのか、楽しみでならない。

 後者は、チューリヒ近郊のヴィンタートゥーアという小都市を本拠とする楽団「ムジークコレギウム・ヴィンタートゥーア」。1875年設立の室内管弦楽団であり、かつてはフルトヴェングラーが指揮台に立ち、若きウェルザー=メストが首席指揮者を務めたという名門団体である。ローカルな存在感を保つ一方、スイス人以外の楽員も多い国際的な楽団でもあるとのことで、独自の歴史を重ねた音色と現代的なフレキシビリティが期待できる。現在の首席指揮者ツェートマイヤーとともに、ベートーヴェンの協奏曲のサポートと、モーツァルト「ジュピター」交響曲で、その真価を知らしめる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年10月号より)

2019.10/28(月)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
http://www.toppanhall.com/