尾高忠明定評のエルガー。特にこの交響曲第1番は内外のオケで100回以上演奏し、録音も当盤含め4種類ある。尾高は大阪フィルとエルガーは相性がいいと公言している。大阪フィルの「浪花節」的ともいえる熱いパッションをぶつける演奏は、尾高の新境地ともいえるだろう。一方でモットー主題のようにエルガーらしい高貴な楽想は、その対比として悠然と美しく演奏される。変化に富む楽想を丁寧に彫琢するのが尾高の持ち味だ。緩徐楽章の透明な音色や内省的な祈りの歌、終楽章の激しい闘争と高揚、そしてすべてをのみ込むモットー主題。尾高の到達した味わい深い円熟の境地。
文:横原千史
(ぶらあぼ2019年10月号より)
【information】
CD『エルガー:交響曲第1番/尾高忠明&大阪フィル』
エルガー:交響曲第1番
尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団
収録:2019年1月、フェスティバルホール&サントリーホール(ライヴ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00693 ¥3000+税