ショパンと同時代に生き、知られざる超絶技巧の名曲を数多く残したアルカンの楽曲を世の中に紹介し続ける、森下唯。その第5弾となるアルバムに収められたのは、アルカン円熟期の名作「エスキス―48のモチーフ」。24の調性を2周する形で書かれたすべての小品には表題が与えられている。それらを、まるで幅広いスタイルで書かれた詩を朗読するように、音の名残を大切に響かせ、多彩に表情を変えながら演奏してゆく。難曲として知られるアルカンの他作品とは一線を画したこの小品集のピアニスティックな魅力を、自在なタッチを駆使して堪能させてくれる。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2019年10月号より)
【information】
CD『アルカン ピアノ・コレクション5「幻影」―エスキス 作品63―/森下唯』
アルカン:エスキス―48のモチーフ op.63
森下唯(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-7239 ¥2800+税