リサイタルはピアノ、CDは2台ハープと共演
NHK交響楽団でチェロのフォアシュピーラー(次席奏者)を務める傍ら、ソリストとして、また人気チェロ・クァルテット「ラ・クァルティーナ」のメンバーとしても活躍する藤村俊介。そんな藤村が11月に行うリサイタルは、ブラームスのスケルツォ(F.A.E.ソナタ)&ソナタ第2番、カサドの無伴奏ソナタ、プロコフィエフのソナタを並べた重厚なプログラムだ。
「メインはブラームスの第2番とプロコフィエフ。どちらの作曲家も、N響で共演した指揮者から多くの示唆を得ました。特に思い出深いのは、前者がホルスト・シュタイン、後者がヴォルフガング・サヴァリッシュですね」
共演は、レバノン出身の実力派ピアニスト、アヴォ・クユムジャン。ウィーンで学び、1981年のベートーヴェン国際コンクールで優勝を飾っている。
「前回のリサイタルでもピアノをお願いしたのですが、まるで野生の馬のように縦横無尽な演奏を展開し、実にスリリングでした。僕もN響では年長の部類に入ってきましたから、一つひとつの仕事をもっと大切にしながら質を上げていきたい。ですから、今回のようなリサイタルにはひときわ力を入れて頑張りたいと思うのです」
10月には、ラヴェルの表題作を含む14曲を収めた4枚目のソロ・アルバム『ハバネラ〜チェロ小品集〜』を発表する。今回の注目は、N響の同僚でもあるハープ奏者の早川りさこと共演していることだろう。
「ロマンティックな名曲を中心に選びました。ハープはピアノに比べて響きが持続しないのが心配だったのですが、それは杞憂に終わりましたね。僕がどんなにテンポを揺らしても早川さんはぴったり合わせてくださって。N響ではわからなかった彼女の凄さや魅力を沢山発見できました(笑)」
さらに、J.S.バッハ「G線上のアリア」やマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲などの7曲では、日本フィルのハープ奏者、松井久子も参加。2台ハープとの美しい掛け合いを楽しめる。
「早川さんが2台ハープを提案してくださったのです。ハープがピアノの替わりを務める時は、音数を減らしたり、アーティキュレーションに不満が残ったりするのですが、今回はそれをすべてカバーした理想的な録音ができました。中でも、サン=サーンス『白鳥』の伴奏は2台ピアノが原曲。優雅に泳ぐ白鳥のチェロだけでなく、ハープが繊細に描き出す湖面の流れや輝きも立体的にお楽しみください」
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ2013年11月号から)
★11月11日(月)・浜離宮朝日ホール
問:マルタミュージックサービス
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【CD】『ハバネラ〜チェロ小品集〜』
マイスター・ミュージック
MM-2166 ¥2957