東京芸術劇場が贈る読売日本交響楽団とNHK交響楽団のコンサート

オケ・ファン必聴、ホール主催の注目2公演が12月に実現


 来年で30周年を迎える東京芸術劇場は2012年のリニューアルオープン以来、コンサートホールの音響がより良くなったと評判で、大編成の管弦楽を豊かな残響と混濁することのないクリアさを両立したホールとして聴衆に愛されている。そんな芸劇が主催する、“冬に熱くなれる”コンサート2つをご紹介しよう。

 まずは井上道義指揮の読売日本交響楽団によるマーラーの交響曲第3番。12月の誕生日で73歳となる井上の深化は留まることを知らず、今年7月に読響と共演したブルックナーの交響曲第8番では「僕の人生の中で白眉の結果だった」と自身で絶賛するほどの境地に達したことで話題に。彫りの深い音楽づくりを徹底しつつも、ケレン味を感じさせない現在の井上と、彼が「今、黄金時代! 素晴らしい!」と賛辞を惜しまない読響との共演はいま最も聴き逃すべきではないコンビだ。アルト独唱はワーグナーの名唱でも知られる池田香織、合唱は首都圏音楽大学合同コーラスほかが参加する。

 もうひとつはパブロ・エラス・カサド指揮NHK交響楽団の演奏会。スペイン出身のエラス・カサドは今年42歳という若さながら、既にベルリン・フィル、シカゴ響といった欧米の一流オケからご指名のかかる未来の巨匠候補、筆頭格。ピリオドアプローチにも精通する彼が、得意とするチャイコフスキー初期の隠れた傑作・交響曲第1番「冬の日の幻想」の真価を引き出す。また弱冠16歳で第15回チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門の第3位に入賞したダニエル・ハリトーノフのソロで、彼の十八番であるリストのピアノ協奏曲を聴けるのも楽しみだ。寒くて出不精になりがちな冬でも駅直結の芸劇なら心配不要である。
文:小室敬幸
(ぶらあぼ2019年9月号より)

読売日本交響楽団
2019.12/6(金)19:00 

NHK交響楽団
2019.12/14(土)14:00

東京芸術劇場コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 
https://www.geigeki.jp/