ロンドンとイタリアで学び、現在国際的に注目を集めるピアニストであるフェドロヴァの、歌心あふれる色彩豊かなピアニズムが伝わってくる最新盤。コンセプト性の強いリサイタルを行い、ディスクを発表してきた彼女の今回のテーマは“幻想曲”。フェドロヴァはかなり感情豊かな演奏をする人だが、それをバランスよくまとめる構築力にも優れている。フレージングの自然さ、音色の多彩さも魅力であり、これらを駆使して楽曲の世界観を明確に提示していく。特にスクリャービンとシューマンで響く輝かしい音色は作品の輪郭を明確に浮き彫りにし、内包された物語を鮮烈に伝える。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年9月号より)
【information】
CD『4つの幻想曲/アンナ・フェドロヴァ』
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」/ショパン:幻想曲/シューマン:幻想曲/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番(幻想曲風ソナタ)「月光」
アンナ・フェドロヴァ(ピアノ)
CHANNEL CLASSICS/東京エムプラス
PCCS41318 ¥2857+税