高崎芸術劇場 9月20日オープン

群馬県高崎市に新しい音楽と舞台芸術の拠点が誕生!

ガラス張りの開放的でモダンな外観
写真提供:高崎芸術劇場

高崎駅から至近の好立地

 「音楽のある街」高崎市に、新たな芸術文化の拠点、高崎芸術劇場が誕生する。高崎芸術劇場は、大劇場、音楽ホール、スタジオシアター他からなり、オペラやオーケストラ、リサイタル、さらにはロック・コンサートや演劇にも使用できる音楽と舞台芸術の殿堂だ。今後は群馬音楽センターに代わって、群馬交響楽団の本拠地としても利用される。
 9月20日のオープンを前に、一足先に劇場内部を取材する機会を得たのでその様子をご報告したい。

 東京駅から高崎駅までは新幹線で約50分。高崎駅東口を出ると、わずか徒歩5分で高崎芸術劇場に到着する。取材時にはまだ工事中だったが、駅からペデストリアンデッキで直結され、雨の日でも傘をささずに劇場へ直行できるようになるという。駅からのアクセスは抜群によい。

 モダンな外観の劇場の内部に一歩足を踏み入れると、大きなガラス面を活用した開放的な空間が待っていた。内部の雰囲気は、オープンかつシック。細部までデザインが行き届いていて、とても美しく居心地のよさそうなスペースなのだ。

緩やかな弧を描き、栗梅色で統一された大劇場客席
写真提供:高崎芸術劇場

広大なステージと最新の舞台機構を擁する大劇場

 この高崎芸術劇場の顔となるのが、2030席からなる大劇場。オペラやオーケストラ、ミュージカルなどの公演に用いられる。写真からもわかるように、深い赤色をベースとした温かみのある色調が特徴で、この色は江戸前期から使われている「栗梅」という伝統色なのだとか。一見して、舞台の間口の広さが感じられるが、28メートルの間口は群馬音楽センターと同等。一方、客席は2階までに留められている。上階席であっても上り下りに苦労しない設計が“今風”。大劇場の入り口に至るまでも段差がなく、建物全般にバリアフリーの思想が一貫しているのも、新しい劇場ならではだ。

 なお、音響設計には、クラシック音楽ファンにはおなじみ、永田音響設計が携わっている。実際の響きはオープンしてからでなければわからないが、満席時の残響は2秒程度に想定されているとのこと。バランスのとれた音響を期待できそうだ。

 9月20日の開館記念演奏会では、この大劇場で大友直人指揮群馬交響楽団、高崎第九合唱団がベートーヴェンの「第九」を演奏する(公募招待公演)。こけら落としといえば、やはり「第九」だ。以後、マルタ・アルゲリッチと酒井茜のピアノ・デュオ、トリエステ・ヴェルディ歌劇場の《椿姫》、ケント・ナガノ指揮ハンブルク・フィル&辻井伸行など、多彩な公演が続く。広大な舞台と現代的な舞台機構によってオペラなど舞台芸術に対応する一方、音響反射板使用時にはコンサート専用ホールと同等のサウンドを実現するというフレキシビリティが強み。

アーティストの息づかいが感じられる音楽ホールほか充実の施設

 音楽ホールは415席の中ホール。こちらは群馬県初となる本格的音楽専用ホール。木のぬくもりが感じられる明るい色調のホールで、とても舞台が近く感じられる。試しに最後列に座ってみたが、客席の勾配がほどよいせいもあってか、十分に舞台が近い。リサイタルでは舞台と客席の距離感が、公演の成功に大きく影響するもの。この親密さはぜいたくというほかない。音楽ホールでは、仲道郁代ピアノ・リサイタル、パウル・バドゥラ=スコダ ピアノ・リサイタル、イザベル・ファウスト&アレクサンドル・メルニコフのデュオ他が開かれる。アーティストの息づかいを間近で感じることができるだろう。

左:吹き抜けの空間に設けられたエスカレーターからは各階の様子が見渡せる 右:リサイタルに最適な音楽ホール
写真提供:高崎芸術劇場

左:スタンディングのロック・コンサートも可能なスタジオシアター
右:リハーサルホールは群馬交響楽団のリハーサル室としても使われる
写真提供:高崎芸術劇場

 スタジオシアターは大劇場や音楽ホールとはがらりと雰囲気を変えて、黒を基調としたモダンなスペース。こちらはロック・コンサートなどのスタンディングイベントや、演劇などを想定した作りになっている。スタンディングなら最大で1,000人の収容が可。取材時はフラットな平土間の状態になっていたが、可動席を用いて演劇、能、舞踊などにも活用される。

 また、高崎芸術劇場は「創造スペース」と名付けたリハーサルホールやレッスンルーム、スタジオを持つ。リハーサルホールは大劇場の舞台と同規模の広さを有し、今後はここが群馬交響楽団のリハーサル室としても使われる。こちらもとても明るくきれいなスペースで、オーケストラのリハーサルには申し分のない環境だろう。群響にとっては心強い存在になりそうだ。

 高崎芸術劇場は隅々まで心配りの感じられる美しい空間だった。あとは名演、名舞台の誕生を待つばかり。高崎市の新たなシンボルになってくれるにちがいない。
取材・文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年9月号より)

問:高崎芸術劇場027-321-7300
  高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900(9/20以降開通)
※オープニング事業ラインナップの詳細は、下記ウェブサイトでご確認ください。 
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/