シベリウス・ピアノ作品のスペシャリスト渡邉規久雄による「シベリウス・リサイタル」第5弾。今年2月の東京文化会館のライヴ録音である。2003年の第1弾から続く渡邉の取り組みにより、作曲家がピアノ小品という形で伝えた特有の親密さや抒情性が、鮮やかに浮き彫りにされてきた。本作は第一次大戦前後の作品が中心。「4つの抒情的小品」や「6つのバガテル」など、詩の行間を慈しむようなタッチや、舞曲のみずみずしい躍動感に満ちている。管弦楽的で異国情緒に富んだ劇音楽のピアノ版組曲「ベルシャザール王の饗宴」も含む多彩な一枚。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年9月号より)
【information】
CD『渡邉規久雄〈シベリウス・リサイタル Vol.5〉』
シベリウス:4つの抒情的小品、2つのロンディーノ、抒情的瞑想、6つのバガテル、8つの小品、組曲「ベルシャザール王の饗宴」(作曲家自身の編曲によるピアノ版)、抒情的ワルツ
渡邉規久雄(ピアノ)
収録:2019年2月、東京文化会館(小)(ライヴ)
オクタヴィア・レコード
OVCT-00164 ¥3000+税