東京藝術大学大学院を経てリスト音楽院で学び、ジュネーヴ国際音楽コンクールで第3位入賞を果たしてドイツでも研鑽を積んだ加藤洋之は、国内外の一流演奏家から信頼を寄せられる室内楽奏者としても活躍中だ。そんな彼のソロ・アルバムは、濃密な音楽的変遷が見えてくるワーグナーやリストをはじめ、シェーンベルクら新ウィーン楽派の作品を集めた2枚組の豪華盤。リストやベルクのソナタにおけるドラマ性と明晰な構築力をはじめ、小品におけるデリケートで色彩豊かな音色など、精緻なピアニズムが凝縮し、加藤の表現力の多彩さ、深さが鮮烈に伝わってくる。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年9月号より)
【information】
SACD『時間から空間へ ―ワーグナーへのオマージュ―/加藤洋之』
ワーグナー:黒鳥館への到着/ベルク:ソナタ/ワーグナー(リスト編):楽劇《パルジファル》より「聖杯への荘厳な行進曲」、楽劇《トリスタンとイゾルデ》より「愛の死」/シェーンベルク:6つの小さなピアノ曲/ウェーベルン:ピアノのための変奏曲/リスト:ソナタ、リヒャルト・ワーグナーの墓に 他
加藤洋之(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCT-00165(2枚組) ¥3800+税