圧倒的な存在感と伝統に根ざしたピアニズム
1932年スペインのビルバオに生まれ、ヨーロッパ各地の国際コンクールで数々の賞を獲得し、59年に英国で行われたリヴァプール国際コンクールで優勝して以来、各地のコンサートホールで演奏を続けているホアキン・アチュカロ。指揮者のサイモン・ラトルは「アチュカロが創り出す非常に独特な音色は、いまではほんのわずかなピアニストしかもっていない。それはとても稀有で、瞬時にそれとわかるものである」と称賛している。そんなアチュカロの圧倒的な存在感と伝統に根差したピアニズムは、深く心に響く。
今回のプログラム、モーツァルト「幻想曲 ニ短調」は優美で明朗な美しい曲。ベートーヴェン「ソナタ第30番」は晩年の大作。ショパン「英雄ポロネーズ」は華麗なテクニックが堪能できる人気の高い曲。グラナドス「ゴイェスカス」はゴヤの絵画から霊感を受けて作曲され、難曲として知られている。アチュカロの熟成したワインのような美音が、しみじみと心に染み込んでくるに違いない。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2019年8月号より)
2019.9/9(月)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
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