高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

BACHが導く大編成サウンドの妙

高関 健 ©大窪道治

 このところ東京シティ・フィルの定期演奏会で好演が続いている。4月の高関健指揮のブルックナーも、5月の川瀬賢太郎指揮のショスタコーヴィチも、作品に対する誠意に溢れた熱演で聴く者を魅了した。指揮者とオケ一体で“音楽する”彼らのコンサートを、ぜひとも多くの人に聴いてほしいと願わずにはおれない。

 そんな折、常任指揮者として4年目を迎えた高関健が、栄誉あるサントリー音楽賞を受賞した。受賞理由を一部記すと「泰西名曲に安住せず、しかし決して奇をてらうだけでもないプログラミングを構築すること、そしてどんな曲であっても細部まで手を抜かずに仕上げること」。これまさに高関&シティ・フィルの在り方を意味している。

 9月のシティ・フィル定期は、4月以来となる高関の登場。バッハ(野平一郎編曲)の「フーガの技法」より、シェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲」、マーラーの交響曲第1番「巨人」というプログラムも、実に興味深い。「フーガの技法」は「BACH」の名を音にしたフーガで筆が途絶えており、シェーンベルク作品はこの「BACH」音型が隠れた主題となっている。さらにマーラーはシェーンベルクが直に信奉した作曲家だ。これは絶妙な関連性を有する、前記の受賞理由そのものというべきプログラムなのだ。「フーガの技法」は編曲と相まって清新な音楽が創出されるであろうし、「管弦楽のための変奏曲」は伝統の形態の到達点と巨大編成による精巧な音響が聴きもの。「巨人」は、高関の精緻な構築が結実した名演が期待される。この濃密な公演に、こぞって足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年8月号より)

第327回 定期演奏会
2019.9/7(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
http://www.cityphil.jp/