かのヨアヒムが音色の美しさに感嘆したというストラディヴァリウスの名器「タスカン」。かつてジョコンダ・デ・ヴィートやピーナ・カルミレッリらに託されたこの楽器を用いて今回ビオンディが録音したのは18世紀イタリアのヴァイオリン・ソナタ集。どの曲も、ビオンディの明快な解釈が各曲の性格を的確に表現していて、さすが第一人者と唸らざるを得ない。タルティーニのメランコリーと名技性の対比や晴朗極まりないヴィヴァルディ、そして典雅なコレッリ…。どの曲も極め付けの名演といいうる。そして練り絹のようなその音色は「タスカン」の恩恵と同時にビオンディその人の匠の技ゆえのもの。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年8月号より)
【information】
CD『1690年製のストラディヴァリウス「タスカン」/ファビオ・ビオンディ』
ヴェラチーニ:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 op.2-12「アッカデミカ」よりチャッコーナ/コレッリ:同 イ長調 op.5-9/タルティーニ:同 ト短調 op.1-10「捨てられたディドーネ」/ヴィヴァルディ:同 変ロ長調RV34 他
ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン)
アントニオ・ファンティヌオーリ(チェロ)
ジャンジャコモ・ピナルディ(テオルボ)
パオラ・ポンセ(チェンバロ)
Glossa/東京エムプラス
PGCD923412 ¥2857+税