【CD】ことばのない詩集/高橋悠治

 高橋悠治は昨今、ますます洋の東西や時代、様式が意味をなさなくなってしまう自在の境地に遊んでいるように見える。本アルバムにも、その精神は如実に表れている。奇妙にスウィングするクープラン「花開くユリ」の千鳥足に魅せられてついていくと、いつの間にかマリピエロの幻想の世界へと足を踏み入れている。高橋の即興的な自作「空撓連句」によって情景が切り替わると、再び15世紀の民謡「優しいマリア」でタイムスリップするが、現代作曲家チャポー・ジュラは自在な変奏で、この民謡の歴史性を解体する。飄々とした風情で小さなものに眼差しを向けながら、世界の広がりを一気にとらえてしまう離れ業。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年8月号より)

【Information】
CD『ことばのない詩集/高橋悠治』

F.クープラン:花開くユリ、葦/G.F.マリピエロ:アーゾロ詩集、きらめき/高橋悠治:空撓(そらだめ)連句/A.シュリック:優しいマリア/C.ジュラ:「優しいマリア」変奏曲

高橋悠治(ピアノ)

収録:2019年3月、浜離宮朝日ホール(ライヴ)
マイスター・ミュージック
MM-4059 ¥3000+税

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