従来の常識を覆すオーケストラ、この9月再びオンステージ
指揮者・西脇義訓が2013年に創設した「デア・リング東京オーケストラ(DRT)」が、9月に第2回公演を行う。
西脇の名を知る読者は多くないかもしれない。長くクラシック・レコード界でプロデューサーとして活躍したベテラン。その一方でアマオケの指揮者としても精力的な活動を重ねてきたのだが、DRTは、その活動の延長上にある趣味の一環などでは、まったくない。
まず、DRTはれっきとしたプロだ。
「メンバーは、創立当時に音大卒業したてだった、当時20代前半の若手が中心です。ヨーロッパのオケから帰ってきたような人もいて、『自分の求めているオケがなかなか見つからなかったのが、ようやく見つかりました』と喜んでくれる人も。そういう人たちが一生懸命応援してくれて続けられています」
コンサートは昨年に続いて2度目だが、西脇の経歴を反映して、すでに7枚のCDをリリースしている。まず彼らのユニークなのがオーケストラの配置だろう。
「僕は最終的に、並び方は関係ないと思っているんです」
よくある古典配置かモダン配置かとかのレベルではない。たとえばあるときは、学校の教室のように、全員が前を向いて並列に並ぶ。またあるときは「パート」という概念を捨てて、第1、第2ヴァイオリンとヴィオラ、チェロが4人でユニットとなり、複数の弦楽四重奏が点在するような形で並ぶ。かと思えば、「通常」のオケのように扇型に並ぶことも。奇をてらうのではなく、指揮者の棒を中心としたアンサンブルづくりへの疑問が根本にあるのだという。
「タクトで音楽を作るのは、効率はいいかもしれません。でも、もうひとつ別の次元でやりたい。『空間力』と言っているのですが、棒を見て弾くのではなく、空間の響きを感じて演奏してほしいのです。その象徴として、いろいろな並び方を試しています」
他人に合わせるのではなく、各自が自立した演奏を目指す。だからコンサートマスターや各楽器の首席奏者も決めない。なんと、弦楽器のボウイングも揃えない。
「常識的に、アップかダウンかはめいめいが分かっています。それを迷うような音楽的な箇所は、実はどっちでもいいようなところが多い。正解などないのです」
ちなみに「デア・リング」の名称はワーグナーの楽劇からとられ、「輪」や「和」に通ずる同オケの基本理念とのこと。9月公演はシューベルトの「未完成」とブルックナーの「7番」。論より証拠。オケ・ファンはまず一度、自分の目と耳でDRTを確かめてみたい。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年8月号より)
デア・リング東京オーケストラ 第2回公演
2019.9/4(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:クレオム03-6804-6526
https://derringtokyo.jimdo.com/
【お知らせ】
「La Valse by ぶらあぼ」では、西脇さんのインタビューの別バージョンを掲載しています。
ぜひお読みください!
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