第40回 霧島国際音楽祭 2019

雄大な自然と極上の音楽が織りなす、ファン垂涎の夏フェス


 “日本で最も熱いフェスティバル”霧島国際音楽祭が、今年ついに40回を迎える。霧島は1980年にスタートした日本で最も歴史ある音楽祭の1つ。コンサートとマスタークラスを両輪に熟成を重ね、現在は堤剛音楽監督のもと、アジアを代表する音楽祭として国内外から高い評価を得ている。出演陣の豪華さはもとより、霧島で学んだ音楽家が教授や演奏家として支える伝統が根付いている点も大きな特徴。日本初の国立公園の大自然、多彩な温泉郷、食の宝庫…とリゾート音楽祭としての魅力にも溢れている。

 今年も霧島&鹿児島各地で7月18日から8月4日まで約50もの公演が開催される。ここでは同音楽祭にゆかりの深い世界的演奏家が繰り広げる注目の公演をご紹介しよう。いずれも東京等では滅多に聴けない垂涎の内容だ。

充実した室内楽公演の数々

 7月26日は、鹿児島市内の主要会場で終日音楽を楽しめる「宝山ホール祭り」を開催。そのトリを飾るのが「堤剛×樫本大進×小菅優」である。日本を代表するチェリスト、ベルリン・フィルの第1コンサートマスターにして世界的ソリスト、国内外で活躍する超実力派ピアニストが組んだこの“夢の饗宴”は、聴き逃せない公演の1つ。ブラームスの濃密な傑作、ピアノ三重奏曲第1番を中心とした演目にも胸が躍る。

 7月27日は、メイン会場「みやまコンセール」で「音楽の散歩」を開催。音響、環境共に最高のホールで一流の公演を終日味わえる名物企画だ。今年の最注目は「エリソ・ヴィルサラーゼ ピアノ・リサイタル」。円熟を極めた深遠な演奏で感嘆させるロシア・ピアニズムの巨匠の至芸で、ベートーヴェン等の名品を堪能しよう。

 7月28日は、みやまコンセールで「スペシャルコンサート」が2つ続く。最初は「ダン・タイ・ソン&カルテット・アマービレ」。1980年ショパン・コンクール優勝以来、第一線で活躍を続ける名手の絶美のピアノと、第37回霧島国際音楽祭音楽賞を受賞し、2016年には難関のミュンヘン国際音楽コンクールで第3位に入賞して話題を集めたクァルテットの世代を超えた共演は、清新な期待に充ちている。

 2つ目は「樫本大進 スペシャルコンサート」。ソリストの川久保賜紀や、読響、N響、都響、名フィル、東響等のコンサートマスター&首席奏者が集った最強の弦楽アンサンブルを、樫本がプロデュースする贅沢な公演だ。ゴージャスなコラボだけでも興味津々だし、ドヴォルザーク、ブルッフ、ブラームスの生演奏を耳にする機会の少ない名作プロにも食指が動く。

サッシャ・ゲッツェル指揮豪華メンバーによる特別編成オーケストラ

 最後は名物オーケストラ公演を2つ。まずは7月31日、宝山ホールでの「キリシマ祝祭管弦楽団」。これは、新旧コンサートマスターや首席奏者を多数含む国内外の楽団トップ奏者(同音楽祭元受講生も多数)主体のスーパー・オーケストラで、毎年絶大な人気を集めている。今年は昨年に続いてサッシャ・ゲッツェルが指揮。N響ほか日本での客演も多いウィーン出身の名匠が、ベートーヴェン、R.シュトラウス等のウィーンものやヴェルディの名曲を聴かせ、華やかなひと時を演出する。

 もう1つは8月4日、みやまコンセールでの「ファイナル・コンサート」。主に選抜受講生による、いわば総仕上げのオーケストラ公演だ。ゲッツェルの指揮に加えて、ピアノのヴィルサラーゼも出演。チャイコフスキーのピアノ協奏曲と「展覧会の絵」を主軸に、感動のクライマックスを築く。

 このほか、アンドレア・ロスト、前橋汀子、鈴木優人、山下洋輔はじめ様々なアーティストが出演し、目移りするほど多彩な公演が行われる。雄大な自然と音楽のコラボを満喫すべく、遠方からもぜひ足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年7月号より)

2019.7/18(木)〜8/4(日)
霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)、宝山ホール、鹿児島市民文化ホール、ザビエル教会 他
問:霧島国際音楽ホール(みやまコンセール)0995-78-8000
  ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530
http://www.kirishima-imf.jp/