絆の深まるコンビによる渾身の「新世界より」
新しい時代のスタートを祝うように、チョン・ミョンフン&東京フィルがドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を演奏する。彼にとって、ドヴォルザークは特別に愛着のあるレパートリーであり、かつてドイツ・グラモフォンでウィーン・フィルとともに、交響曲第3番、第6番、第7番、第8番、弦楽セレナード、管楽セレナードなどの録音を行い、素晴らしい演奏を残した。2011年のチェコ・フィルとの来日公演での「新世界」も見事だった。また12年の東京フィル創立100周年特別演奏会でも同曲を取り上げている。「新世界」にオープンで自由なスピリットを感じるチョン・ミョンフンが今回も新鮮でドラマティックな演奏を聴かせてくれるに違いない。
演奏会の前半では、15年のシベリウス国際コンクールで第1位を獲得したクリステル・リーがシベリウスのヴァイオリン協奏曲を弾く。リーは、韓国系カナダ=アメリカ人であり、チョン・キョンファの弟子である。若い才能の紹介にも熱心に取り組むチョン・ミョンフンが、姉の推薦を受けて、リーの東京フィル・デビューのサポートをする。
20年近くを経て、ますます絆を深めているマエストロと東京フィルは、昔のように彼が強引に引っ張らなくても、東京フィル自体が自分たちで音楽を作るようになっている。そんな変化も生の演奏会で確かめたい。今、東京で最も聴くべき指揮者とオーケストラのコンビの一つといえるだろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2019年7月号より)
2019.7/18(木)19:00 サントリーホール
7/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp/