世界的プロジェクトの鮮烈なる生体験
エベーヌ弦楽四重奏団が今もっとも聴くべきクァルテットであるのは間違いない。フランス出身の彼らは、2004年に難関のARDミュンヘン国際コンクールで優勝して以来、第一線で活躍。ウィグモア、コンセルトヘボウ、カーネギー等の権威あるホール、ルツェルン、ザルツブルク等の著名音楽祭へ頻繁に招かれ、CDも常に話題を呼んでいる。その演奏は、全ての音とフレーズに生気が宿り、清新で表情豊か。そして古典とジャズをしなやかに往来する柔軟性、緻密かつダイナミックな構築性、奏法と呼吸の完璧な統一性を併せもち、生命力漲る音楽は弦楽四重奏の通でないファンをも魅了する。
彼らはこのほど、20年のベートーヴェン生誕250年記念イヤーに向けたプロジェクト「ベートーヴェン・アラウンド・ザ・ワールド」をスタートした。これは欧米、アジア、アフリカ、オセアニアを巡る世界ツアー。各回の最終公演はライヴ録音され、CD全集としてリリースされる。この日本公演もその一環だ。
演目は、第9番「ラズモフスキー第3番」と第13番「大フーガ」付きの濃密な組み合わせ。シンフォニックな第9番と組曲風の第13番は、多彩さにおいて中期と後期を代表し、共に各時期の技法を最大限に駆使したフーガで終わる。中でも、第9番のエキサイティングな終楽章、第13番の美しいカヴァティーナと壮絶な大フーガへの期待は大きいし、サントリーホール公演はライヴ録音されるので、完成度MAXの演奏になること必至。現代屈指のクァルテットがおくる鮮烈なベートーヴェンを聴き逃してはならない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年7月号より)
2019.7/14(日)14:00 びわ湖ホール(小)(完売)
7/15(月・祝)17:00 Hakuju Hall(完売)
7/16(火)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
問:メロス・アーツ・マネジメント03-3358-9005
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