名匠の多才ぶりと高潔な演奏に耳を澄ます
2年前に傘寿を迎え、その記念公演でも衰えぬ至芸を聴かせた、チェリスト平井丈一朗。この7月には次男の平井元喜のピアノと共に、演奏活動65周年を記念する公演が開かれる。
平井丈一朗といえば、チェロの神様パブロ・カザルスに認められた、数少ないチェリストである。カザルスは平井のために指揮者や伴奏ピアニスト(!)まで自ら担当し、「平井こそは我が後継者」と公言したほどの愛弟子だった。今回演奏されるカザルス作曲「チェロのための詩(ポエム)」は、1957年に平井のチェロ、カザルスのピアノで初演された伝説的な1曲。カザルスの魂を伝える初演者、平井の演奏で聴ける機会は貴重そのもの。
本公演では、バッハやショパンのソナタといった古典的な名作も取り上げ、演奏芸術の伝統を伝える。そして平井自身の作品、14歳時の「イ調の旋律」と5年前初演の「越後の幻想」が聴けるのも貴重で、平井の多才ぶりと芸術の変遷が体験できる。日曜の午後、65年の重みをじっくり味わえるリサイタルだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年7月号より)
2019.7/14(日)14:00 東京文化会館(小)
問:インターミューズ・トーキョウ03-3475-6870
http://intermuse.lolipop.jp/