バロック・チェロとヴィオラ・ダ・ガンバ。同様に座って両足で楽器を挟むため、その弾き分けは容易に思えて、調弦や弓の運び、何よりも音楽創りの思想が全く異なり、実は非常に難しい。しかし、東京藝大・同大学院やフランスに学び、2つの楽器とモダンを操る“三刀流”の俊英・島根朋史は、あえてこの課題に挑む。17世紀フランスの謎多き鬼才サント=コロンブの作品を大枠に、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番を軸として、個性的な作品を配し、時代や地域の語法をきっちり踏まえて、多層的かつ魅力的な表現を具現化。1人の奏者が内包する、響きの宇宙の広大さに驚かされる。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年6月号より)
【Information】
CD『Les Monologues(レ・モノローグ) 無伴奏チェロと無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための作品集/島根朋史』
サント=コロンブ:前奏曲、シャコンヌ/テレマン:無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのためのファンタジー第11番・第7番/フランショーム:チェロのための練習曲op.35-11、チェロのための奇想曲op.7-9(以上無伴奏版)/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 他
島根朋史(チェロ/ヴィオラ・ダ・ガンバ)
コジマ録音
ALCD-9196 ¥2800+税