渡辺健二 ピアノリサイタル

深淵で内省的な世界へと誘うピアニズム

 リスト作品に造詣が深く、東京藝術大学で後進の指導にも当たるピアニスト渡辺健二。昨年のリサイタルに引き続き今年もバルトークとリストの組み合わせ、そしてシューベルトという3人の作曲家を並べたユニークなプログラミングで聴かせる。前半はハンガリー出身という共通点のあるバルトークとリスト。バルトークの「ブルガリアのリズムによる6つの舞曲」は、4拍子や3拍子の組み合わせによる独特なリズムを持った作品。リストの「B-A-C-Hの名による幻想曲とフーガ」は、文字通りリストが尊敬していたバッハの名を“シ♭―ラ―ド―シ♮”のモティーフに置き換えたピアニスティックな作品で、渡辺は曲集「詩的で宗教的な調べ」の中で最も長大で瞑想的な美を放つ第3曲「孤独の中の神の祝福」へと続ける。後半はシューベルトが最期に残したピアノ・ソナタ第21番。渡辺のピアニズムが響かせる、ピアノ音楽のもっとも深淵で内省的な世界に浸りたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年6月号より)

2019.6/14(金)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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