何とも意欲的な1枚。その曲目はヒンデミット、バルトーク、プロコフィエフにメシアン、そしてヤナーチェク。収録曲はどれも技術的、あるいは音楽的な内容の表出において難易度の高いものばかりだが、ここで山根は技術的な余裕をもって極めて懐の深く包容力のある音楽を奏でている。この演奏で聴くと、乾いていると思われがちなヒンデミットの抒情的な魅力に気付かされるが、反面プロコフィエフでは衰えを知らぬ躍動を聴き手に印象付け、その表現の幅は大層広い。メシアンの沈滞、ヤナーチェクでの和声的な妙味の表出など、只の“鋭角的な”20世紀作品集に非ず、真の名人の業を堪能されたし。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年5月号より)
【Information】
CD『山根弥生子 20世紀音楽を弾く』
ヒンデミット:ピアノ・ソナタ第3番/バルトーク:ミクロコスモス第6巻より/プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第2番/メシアン:「前奏曲集」より/ヤナーチェク:ピアノ・ソナタ「1905年10月1日」 他
山根弥生子(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-9194 ¥2800+税