洗練を増した声、自在になった歌で、いよいよウィーンを歌う
「最近、ヌッツォがいいよ!」という声を、ここ2、3年よく耳にする。そのたびに筆者も首肯する。もちろん、ヌッツォは以前から抜群の知名度を誇る。2000年にウィーン国立歌劇場にデビューし、その後、ザルツブルク音楽祭やメトロポリタン歌劇場などで活躍した記憶もいまだに鮮明である。
だが、筆者個人としては、16年にリリースされたアルバム『イタリアン・アリア』(フォンテック)に一層の衝撃を受けた。以前から美声であったが、発声が一段と深くなり、高い声域への移行も自然になり、響きも輝きを増していたからだ。声が洗練され、歌が自在になっていた。同年にドミンゴと共演したビゼー《真珠採り》の二重唱も、絶品であった。
とはいえ、ヌッツォの原点はウィーン。滝本紘子のピアノで歌う今年のリサイタルのテーマは、いよいよウィーンだという。しかも、ゲストはウィーン国立歌劇場と専属契約を結んでいたバリトンの甲斐栄次郎。プログラムは、シューベルト「美しき水車小屋の娘」(抜粋)やレハールの喜歌劇の名ナンバーなど(予定)。これは期待を膨らませずにはいられない。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2019年4月号より)
2019.5/10(金)東京文化会館(小)(Ro-Onチケット047-365-9960)、5/16(木)横浜みなとみらいホール(小)(神奈川芸術協会045-453-5080)、6/16(日)福島市音楽堂(024-531-6221)、6/22(土)兵庫県立芸術文化センター(小)(大阪アーティスト協会06-6135-0503)
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