「ハンマークラヴィーア」を含む中期から後期の傑作を
いよいよ河村尚子の「ハンマークラヴィーア」が聴けるとなれば、わくわくせずにはいられない。全4回からなるシリーズ「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」の第3回のプログラムは、第27番ホ短調、第26番変ホ長調「告別」、第29番変ロ長調「ハンマークラヴィーア」の3曲。中期から後期へと向かうベートーヴェンの三者三様の作品が並べられた。
あたかもシューベルト風のロマン性を先取りするかのような第27番、力強く雄渾な第26番「告別」、そしてもっとも長大で深遠なソナタ「ハンマークラヴィーア」。どの3曲をとっても楽しみだが、やはり「ハンマークラヴィーア」はピアニストにとってある種の頂点をなすようなチャレンジングなレパートリーと言えるだろう。とりわけ第4楽章のフーガは、聴き手にとっても作品と対決するかのような集中力が求められる。
同シリーズの前回公演では、中期の傑作群について、構築美とパッションが完璧なバランスで共存するベートーヴェンを聴かせてくれた河村。作品様式にふさわしくダイナミズムにあふれた演奏だったが、さて今回の公演ではどんなベートーヴェンを聴かせてくれるだろうか。説得力と清新さをあわせもった現代にふさわしいベートーヴェン像を築いてくれるのではないだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年4月号より)
2019.4/25(木)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
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