【CD】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」/朝比奈隆&新日本フィル

 朝比奈隆が手兵大阪フィル以外で恒常的に指揮したのが新日本フィルで、《指環》全曲など名録音を多く残した。彼らとの最後のベートーヴェン・ツィクルスも、この「第九」で完結した。90歳になろうという巨匠の芸の奥行が随所で感じられる。冒頭楽章がとても立派な造形である。ヴィブラートをたっぷり効かせた弦の美しいこと。第1主題の頂点やカタストロフ的再現では、凄まじいエネルギーが放出される。反復を律儀に行うスケルツォや緩徐楽章の内面から沸き上がるような格調高い歌、終楽章の堂々たる歩みと有無を言わせぬ感動は、朝比奈ならでは。栗友会の合唱も素晴らしい。
文:横原千史
(ぶらあぼ2019年3月号より)

【Information】
CD『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」/朝比奈隆&新日本フィル』

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」

朝比奈隆(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
豊田喜代美(ソプラノ) 秋葉京子(メゾソプラノ) 若本明志(テノール) 多田羅迪夫(バリトン)
栗友会合唱団

収録:1998年6月、サントリーホール(ライヴ)
フォンテック
FOCD9800 ¥2500+税