第21回「別府アルゲリッチ音楽祭」記者発表

 ピアニストのマルタ・アルゲリッチを総監督、伊藤京子を総合プロデューサーに迎えて、大分県別府市を中心に毎年開催されている「別府アルゲリッチ音楽祭」の記者発表が、2月14日に都内で行われた。
(2019.2/14 大分県東京事務所県人会ホール Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE)

伊藤京子

 同音楽祭は、1998年にスタートし、今年で第21回を迎える。昨年12月には、20周年記念事業として、「ローマ・大分友好交流〜別府アルゲリッチ音楽祭 in ローマ」公演も実現させ、音楽祭アドバイザリー・コミッティのアントニオ・パッパーノ(指揮)とアルゲリッチ、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団メンバーらによる公演が開催された。16世紀に豊後の大名・大友宗麟のもと、天正遣欧少年使節を派遣し、また日本人により初めて西洋音楽が奏でられた“西洋音楽発祥の地”であるという歴史的背景をもった大分県にとっては、まさにその歩みを象徴するようなローマ公演となった。

 2019年は、5月12日から6月2日にかけて、関連公演も含め全13公演が行われる。メインとなるのは、シャルル・デュトワ指揮東京音楽大学シンフォニーオーケストラによる「オーケストラ・コンサート」(5/18)。アルゲリッチとミッシャ・マイスキー(チェロ)をソリストに迎え、2曲の協奏曲(リスト、サン=サーンス)を含むフランスものを中心としたプログラムが組まれた。また、20年のベートーヴェン生誕250年に向け、プレ・イヤーとなる今年は「悠久の真実〜ベートーヴェン」をテーマに掲げ、アルゲリッチとラデク・バボラーク(ホルン)、豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)、向山佳絵子(チェロ)らが共演する「室内楽コンサート」(5/31)や、竹澤恭子(ヴァイオリン)、豊島、川本嘉子(ヴィオラ)、原田禎夫(チェロ)という豪華メンバーによる大分市での公演「スペシャル・カルテット」(6/2)等では、ベートーヴェンを中心に組んだプログラムが披露される予定。また、芥川賞作家・平野啓一郎がベートーヴェンについて語る「未来プロジェクト」(5/19)も話題を呼びそうだ。このほか、恒例の「大分県出身若手演奏家コンサート」(5/12)や「公開マスタークラス」(6/1)も行われる。また、地域拠点コンサートとして、日韓文化交流コンサート(5/8)をソウルで6年ぶりに開催するほか、滝廉太郎ゆかりの竹田市ではマイスキーによるソロ・リサイタル(5/19)も予定されている。東京オペラシティでは、「ピノキオ支援コンサート」(5/24)が開催され、アルゲリッチらが出演する(曲目は3月中旬発表予定)。
 今年、ベートーヴェンをテーマに据えた思いを、伊藤は次のように語った。
「人命が脅かされる時代にあって、人類愛、寛容の精神を高めていきたいという思いがあり、ベートーヴェンが目指したこと、音楽を通して何を伝えたかったのかという点に着目しました。『第九』のシラーの詩に代表されるような“人類はみな兄弟”という精神が大事になってきている世の中だからこそ、そのことをいろいろなアーティストの音楽を通して皆様に感じていただきたい、というが今回のテーマの目的です」

 従来より、県内のみならず福岡や東京からの来場者も多いというが、今年は特にラグビーW杯が5試合大分で行われることもあり、海外からの注目度の高まりも背景に、音楽祭としてさらなる飛躍を目指す第21回となる。

【Information】
第21回 別府アルゲリッチ音楽祭
2019.5/12(日)〜6/2(日)しいきアルゲリッチハウス、ビーコンプラザ、iichiko総合文化センター、平和市民公園能楽堂 他
問:アルゲリッチ芸術振興財団0977-27-2299
http://www.argerich-mf.jp/