リゴレットにはヴェルディの男性像が凝縮されています
新国立劇場の2013/14シーズン開幕公演《リゴレット》に主演するマルコ・ヴラトーニャ。大劇場から引っ張りだこの「性格派バリトン」が抱負を熱く語る!
「道化師リゴレットの人物像は、まさに現代人に近いもの。彼は生活の場ごとに顔を変え、忙しさに追われ、トラブルに満ちた日々を送ります。私はこれまでヴェルディのバリトン役をたくさん演じてきましたが、リゴレットには、ヴェルディが描く男性像のすべてが凝縮されていると思うのです。だから、できるだけ素直なアプローチで臨みたいのです!『愛情深い父親』の面は終盤で最もクローズアップされますが、彼がそもそも苦悩を抱え、たえず人生の浮沈をくり返すという姿はどの場面でも一貫していますね。歌詞を一言ずつ追い、音楽に丹念に耳を傾けたならば、おのずとそこに、手で触れられるかのように彼の人間性が現われます。私はそれを皆様に漏らさず伝えなければなりません」
舞台デビューもヴェルディで果たしたヴラトーニャ(2000年《スティッフェーリオ》のスタンカー役)。この作曲家の音楽で最も興味深い点とは?
「ヴェルディは、人物が置かれた状況を完璧に描くため、すべての音符を活用しました。ですから、彼の音楽は最初から最後まで『成長』し続けます。登場人物の魂の在り様がアリアとなり、二重唱、三重唱となり、嘆きや歓喜を表す─そうなると音符も単なる『音』ではなく、人の『こころ』と同質の何かになります。だからこそ彼のオペラは多くの人を惹きつけるのです!」
リグリア海に面したラ・スペーツィアの生まれ。オペラとの出会いはいかに?
「私は歌に関するほぼすべてを独学した上で、地元とモデナで音楽院に短期間在籍し、すぐにデビューが決まりました。当時の一番の思い出はパヴァロッティさんとお近づきになれたこと。新人ながら、彼のキャリア40周年記念演奏会に出させて頂きました(01年モデナ)。本当に光栄でした…私はプッチーニも良く歌いますが、プッチーニのオペラでは『歌う』よりも『喋っている』かのように演じる必要があります。一方、ヴェルディで求められるのは、レガートやカンタービレといった楽想の指示であり、それらを忠実に守れば見事な人物表現が可能になります。音の流れを途絶えさせないこと、それがヴェルディの神髄です…東京には2001年に行って以来で、やっと2度目が訪れました。新国立劇場に招かれて題名役を歌うのですから興奮せずにはいられません。皆様にお目にかかれる日を心待ちにしています!」
取材・文:岸純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2013年10月号から)
新国立劇場 《リゴレット》(新制作)
10月3日(木)、6日(日)、9日(水)、12日
(土)、16日(水)、19日(土)、22日(火)※
※10/22(火)は貸切公演
問新国立劇場ボックスオフィス
03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp
ローチケL32002