【公演中止・曲目変更】レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)

作品への敬愛がもたらす至高のピアニズム

C)Gregor Hohenberg
 レイフ・オヴェ・アンスネスはレパートリーをじっくりと広げていくピアニストである。リサイタルのプログラムも熟慮し、全体のバランスを考慮し、自身の「いま」を映し出すものにこだわる。今回の選曲は、シューマンが4つの音符によって情景を描き出した演劇性と物語性に富む「謝肉祭」をメインに据え、フィナーレを華々しく飾る。オープニングもシューマンの「3つのロマンス」で始め、あたかもひとつの芝居を構成しているような空気を醸し出す。これに長年弾き続け、アンスネスの子ども時代の思い出を蘇らせるヤナーチェクの「草かげの小径にて」を加え、シューマン特有の情景につながる表情を備えたバルトークの「3つのブルレスク」へと続け、各々の作品を有機的なつながりをもって組み立てている。
 アンスネスのピアノはいかなる超絶技巧も実に自然で、全編は凛とした音に包まれ、余計な感情移入はいっさいなし。潔さと迷いのなさが印象的で、それぞれの作曲家への深い敬愛の念と作品への愛情が音楽に生き生きとした生命力を与えている。自身の存在よりも作品の美質を優先する演奏に聴き手は感銘を受け、ピアノを聴く至福の喜びに満たされる。
 今回はウラディーミル・ユロフスキー指揮ベルリン放送交響楽団との協奏曲も予定され、長年弾き続けているブラームスの第1番が披露される。「ブラームスの内省的で滋味豊かな音楽が自分にとても合う」と語るアンスネスのコンチェルト、巨匠への道を歩む彼の真骨頂となりそうだ。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2019年1月号より)

リサイタル 
2019.3/18(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
他公演
2019.3/17(日)豊田市コンサートホール(0565-35-8200)

ユロフスキー指揮ベルリン放送響との共演 
2019.3/26(火)19:00 サントリーホール 
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
他公演
2019.3/20(水)東京文化会館(都民劇場03-3572-4311)、3/24(日)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、
3/27(水)愛知県芸術劇場コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118)
※各公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
https://www.japanarts.co.jp/

※レイフ・オヴェ・アンスネスは、肘の不調により、日本公演2公演含むアジアでのリサイタル公演を中止しました。ベルリン放送交響楽団との共演は、来日公演を強く希望する本人の意志を尊重し、医師と相談の結果、曲目変更の上、実施いたします。
詳細を下記ウェブサイトでご確認ください。(2019.3.5 主催者発表)

https://www.japanarts.co.jp/news/news.php?id=3804