ウィーンを彩った名曲と楽しいトークで贈る好企画
2019年は日本オーストリア国交樹立150周年。人気指揮者・飯森範親が、ナビゲーターとして独自の切り口でクラシック音楽の世界を案内する「飯森範親と辿る芸術」の第2弾は、題して「19世紀のウィーンを支えた音楽家たち」。ピアニスト金子三勇士とともに、この時代のウィーンを彩った名曲の数々を、トークを交えながら紹介する。
飯森「前半はモーツァルトからベートーヴェン、シューベルトと、18世紀末から19世紀初頭の古典派の黄金期のウィーン。その後、経済的にも芸術的にもいったん衰退した時期が休憩の間にあって(笑)、後半は19世紀後半のリスト、ブルックナー、ブラームス。フランツ・ヨーゼフ1世と王妃エリーザベトが治めたオーストリア=ハンガリー帝国時代のウィーン全盛期を辿ります」
金子「歴史の話だけではなく、たとえばベートーヴェンのソナタをリストはどう見ていたのか、作曲家たちがその時代をどんな思いで生きてきたのかを見ていただけたら面白いですね」
「トルコ行進曲」「悲愴」「ラ・カンパネラ」等々、名曲がずらりと並ぶプログラムだが、「だからこそ、ふだん聴き慣れたのとは違う新しい解釈を聴かせたい」(金子)、「トーク付きの音楽会は、固定観念を変えて、別の側面から聴いてもらうきっかけ作りにもなる」(飯森)と、「名曲の新たな体験」が、もうひとつのテーマになりそう。
目を引くのがブルックナーの「思い出」。ブルックナーのピアノ曲自体がレアなジャンル。「古典的な響きと思いきや、ショパンっぽかったり、ブラームスっぽかったり」(金子)という、1868年頃作曲の初期作品だ。
そして「以前聴いた彼の演奏のテンションにびっくり。とにかくすごい、としか形容できないぐらい。凄まじいエネルギーを出してくれると思います」と飯森が絶賛するイチ押しがリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」。金子自身も「燃えますね。ハイ・リスク、ハイ・リターン。最後は絶対にブレーキをかけない」とうなずく。体内に流れるハンガリーの血が騒ぐということだろう。必聴だ。
シリーズの前回は、飯森はトークだけでなく、所有の絵画を持参したり、アンコールでピアノを弾いたりと大サービス。今回も大いに楽しませてくれるに違いない。なお、終演後に出演者を交えたアフタヌーンパーティー付きの「特別プラン」(40名限定)は早々に売り切れとなった。次のチャンスを待ちたい。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年1月号より)
Elegant Time Concert〜上質な時間を貴方に〜
飯森範親と辿る芸術 Vol.2 金子三勇士(ピアノ)を迎えて
〜19世紀のウィーンを支えた音楽家たち〜
2019.3/13(水)13:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171
https://www.yamahaginza.com/hall/