生命の息吹がもたらす爆発的なエネルギーを示唆する「春」の音楽
東京都交響楽団とは初共演から「独特のケミストリー」が生まれたという首席客演指揮者のアラン・ギルバート。12月の定期演奏会Bシリーズおよび都響スペシャルでは、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、シューマンの交響曲第1番「春」、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」というプログラムが組まれた。
シューマンとストラヴィンスキー、ともに「春」を題材とした季節感を先取りしたプログラムであるが、うららかな春と呼ぶにはあまりにもドラマティックな2曲が並んでいるのが興味深い。生命の息吹がもたらす爆発的なエネルギーはときに力強く、眩しく、ときに面妖で、畏怖の念を呼び起こすことを示唆するかのような組合せだ。シューマンの「春」では、冒頭のホルンとトランペットによるファンファーレ風動機が春を告げるが、続くうごめくような春の胎動は過剰なまでの熱気をはらんでいる。ストラヴィンスキーの「春の祭典」で描かれるのは、複雑なリズムとハーモニーで精緻に設計された、洗練された邪教の儀式。春とはいけにえを捧げる禍々しい季節なのだ。
両曲のオーケストレーションは対照的だ。くすんだ色調が玄妙な味わいをもたらすシューマンと、原色を大胆に用いるかのような鮮烈このうえないストラヴィンスキー。作品に応じてサウンドを変化させるギルバートと都響の柔軟性にも注目したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年12月号より)
第868回 定期演奏会Bシリーズ 2018.12/10(月)
都響スペシャル 2018.12/11(火)
各日19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
http://www.tmso.or.jp/