クリスマスにさまざまな“マリア”を歌います
林美智子がマリアになる! 今年から新たに「歌うクリスマス」と銘打った紀尾井ホールのクリスマス・コンサート。その第一弾が「マリア、現る!」だ。「聖母マリア」はもちろん、音楽ジャンルを超えてさまざまな「マリア」にスポットを当てたプログラムがユニーク。〈アヴェ・マリア・メドレー〉から〈レット・イット・ビー〉〈五番街のマリーへ〉〈聖母たちのララバイ〉…。
「すごいですよね、これ。ジャンルを超えて表現する場を与えていただき、クラシックの声楽家としてだけではなく、大きな意味で『歌い手』として、ぜひ挑戦したいです。もちろんジャンルごとにそれぞれの様式感があるので、そこは少し寄せながら。でも『歌』というのは、その人の『伝えようとする意思』があっての存在なので、もともとジャンルはあまり関係ないのかもしれませんね」
もちろんオペラのナンバーも。たとえば《トスカ》の〈歌に生き、愛に生き〉。いうまでもなくソプラノの役だ。普段のリサイタルでも、他にもミミとか、マスカーニの作品、ヴェルディの初期作品など、ソプラノのレパートリーも歌っている。
「自分でも声の変化を楽しみながら。トスカやミミは、ハイライトでもいいので、いつか全幕を通して歌ってみたい役です」
それは楽しみだ。たぶんとても合っている。
歌の「相方」はバリトンの黒田博。二期会の研修所時代の林の師でもある。
「バリトンとメゾは共通するところがあって、40代、50代、60代と、年齢とともに声がワイドになってゆく楽しみがあります。黒田さんはまさにその声の広がりと対峙して、しっかり道を切り開いている方。舞台人として必要な、歌、演技、ユーモアを非常にバランスよく備えられた先輩で、今回のようなヴァラエティに富んだプログラムには、まさにうってつけの方だと思います」
山田武彦(ピアノ/編曲)を筆頭に、器楽陣も頼もしい。人気ギタリスト朴葵姫とは初共演だ。
「ギターの世界観は独特です。とても繊細な楽器なので、私も言葉でドラマが作れます。歌うよりも、語るイメージ。私にとって、もしかしたら一番繊細で直接的な表現ができるのがギターとの共演かもしれません」
そう言われてしまっては、そこも絶対に聴き逃せない。でも、今回どの曲でギターとのデュオが実現するかは、当日のお楽しみだ。なお、司会を務めるのは元AKB48で音大ピアノ科出身の松井咲子。百戦錬磨のクラシックの達人たちとのサプライズ共演もあるかもしれない。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2018年12月号より)
紀尾井クリスマスコンサート2018 歌うクリスマス1
マリア、現る! クリスマスにマリアをテーマとした古今の歌を楽しむ
2018.12/21(金)19:00、12/22(土)16:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp/