バラードはショパンの“人生”のようなものだと思います
ウィーンと日本を拠点に幅広い演奏活動を展開するピアニストの岩崎洵奈。アルゲリッチから「自然で美しい演奏」と高い評価を受け、2010年のショパン国際ピアノコンクールではディプロマ賞を獲得するなど、ショパンは彼女にとってなくてはならない存在。そんな彼女がショパンのバラード4曲を収めた3年ぶりとなるアルバム『ジェイ・セカンド〜バラード〜』をリリースする。
「バラードは4曲とも10代のころからずっと弾き続けてきた大切な作品で、いま出せるものを出したいと思い録音しました。これらはショパンの“人生”のようなものだと思っていて、演奏するたびに感じ方も変わっていくので、一緒に年を重ねていくような感覚があります。また、『ジェイ・ファースト』のときは“リズム”をテーマにしたのですが、今回はイメージをガラリと変えてプログラミングしたかったという想いもありました」
CDのジャケットも前回の白を基調とした華やかなものと対照的にシックな雰囲気でまとめられている。また小品が多く並んでいた前作に対し、今回はベートーヴェンのソナタ第17番「テンペスト」も収めるなど非常に重厚だ。
「せっかくウィーンに住んでいるので、その空気感を出したいなと思い、ベートーヴェンやツェルニー、グリュンフェルトの作品も入れました。『テンペスト』は32曲あるソナタの中で『第九』と同じ唯一のニ短調で、ベートーヴェンの中でとても重要な作品だと思っています」
岩崎は現在もウィーン国立音楽大学大学院で研鑽を重ねており、ベートーヴェンの演奏に力を入れているところだという。
「もともとよく弾いている作曲家ではあったのですが、先日ご縁があってイタリアのポジターノというところにヴィルヘルム・ケンプが住んでいた家があり、そこでベートーヴェンの様々な作品を扱うマスタークラスやコンサートに参加して濃い時間を過ごすなどして、最近特によく弾くようになりました。またショパンを追求していくうち、ベートーヴェンにつながるところがたくさんあるという発見もあり、非常に注目しているんです」
2019年2月には「大宮臨太郎&岩崎洵奈 2017-2020〜ベートーヴェン生誕250年を祝う」と題されたオール・ベートーヴェンによるシリーズの第2回に出演予定だ。
「昨年からはじまったシリーズで、ベートーヴェンのピアノソロやデュオ、トリオに歌曲など様々な作品を通して、ベートーヴェンをより深く見つめていきます」
ベートーヴェンを探求し、さらに深みを増したショパン、そしてウィーンの空気を存分に纏った彼女だからこそ出せるものが詰まった『ジェイ・セカンド』をぜひ堪能してほしい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年11月号より)
大宮臨太郎(ヴァイオリン)&岩崎洵奈(ピアノ)
2017-2020〜ベートーヴェン生誕250年を祝う
2019.2/8(金)19:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
問:かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233
http://www.k-mil.gr.jp/
2018.11/13(火)発売
CD『ジェイ・セカンド〜バラード〜』
日本アコースティックレコーズ
NARD-6009
¥3000+税