【CD】フレスコバルディ 鍵盤作品集/辰巳美納子

 チェンバロの名手・辰巳美納子による、3枚目のソロ・アルバム。初期イタリア・バロックにあって、盛期を先取りする先鋭的な作品を残した、鬼才フレスコバルディに対峙した。当時使われたのは、5度よりも3度の純正を最優先した「中全音律」。しかし、演奏可能な調性は限定的だったため、解決策として、分割鍵盤の楽器が一部で用いられた。今回は、このタイプの楽器のレプリカを使用。創意が凝らされた、作品ごとの色彩の違いを表現し尽くしてゆく。特に、転調の多い「パルティータ」では威力を発揮、知性と愉悦の均衡を絶妙に保つ辰巳らしい快演が、凛とした響きを纏う。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年11月号より)

【information】
CD『フレスコバルディ 鍵盤作品集/辰巳美納子』

フレスコバルディ:トッカータ第1巻 第8番、5つのガリアルダ、カンツォーナ第1番、バッサ・フィアメンガによるカプリッチョ、4つのコレンテ、ベルガマスカ、トッカータ第2巻 第9番、パッサカリアに基づく100のパルティータ 他

辰巳美納子(チェンバロ)

コジマ録音
ALCD-1172 ¥2800+税