天才少年が書いた“愛の牧歌劇”を充実の布陣で
“神童モーツァルト”が12歳の時に書き上げた、全1幕のオペラ《バスティアンとバスティエンヌ》。少年ならではの初々しさに満ちながらも、端々に後年を思わせる熟達した作曲技法をのぞかせる佳品が、東海地区にゆかりのキャストと指揮者により、愛知県芸術劇場小ホールで上演(ドイツ語歌唱、字幕付き・台詞は日本語)される。
このオペラのストーリーは、実にシンプルだ。最近、恋人バスティアンの態度が冷たくなったことを悩む、羊飼いの娘バスティエンヌ。自称・魔法使いのコラスに相談、「つれない態度を取れ」と忠告され、その通りにしたところ、互いに意地を張り合って喧嘩に。しかし、最後には和解、3人で喜びを分かち合うーー。
実はこの物語、ジャン=ジャック・ルソーがオペラ化するなど、フランスでは既に人気の素材だった。少年モーツァルトは、ドイツ語訳された台本に基づき、一家で滞在中だったウィーンで作曲。1768年に同地で初演された。決して技巧的ではないが、美しい旋律が散りばめられ、終曲の三重唱をはじめ、とても12歳の作とは思えぬ、聴かせどころも数多い。
今回は、バスティエンヌには三重県出身の伊藤晴と愛知県出身の柴田紗貴子、バスティアンには共に名古屋市在住の中井亮一と吉田連と、強力なダブルキャスト。コラスは全公演通しで、田中大揮が演じる。愛知室内オーケストラを振るのは、来春にセントラル愛知交響楽団常任指揮者への就任が決まっている角田鋼亮。演出には、ドイツで研鑽を積んだ、気鋭の太田麻衣子を迎える。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2018年11月号より)
2018.11/16(金)19:00、11/17(土)14:00 18:00 愛知県芸術劇場(小)
※配役などの公演詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:愛知県芸術劇場052-971-5609
http://www.aac.pref.aichi.jp/