METライブビューイング2018-19

悲恋からスペクタクルまで ――今年も見どころ満載の華麗なるラインナップ


 まだ43歳という若きヤニック・ネゼ=セガンを新音楽監督に迎えたいま、世界一の規模を誇るオペラハウスに文字通りの新風が吹き込んでいる。ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場では公演を日々行いながら、“METの豪華なステージングを世界の隅々まで届ける”METライブビューイングに精力的に取り組むが、その新シーズンもまた、この大歌劇場の新たな門出として、世の注目を浴びているのである。
 このライブビューイングとは、つまりは“舞台を映像収録し、世界中に配信する”というもの。その成果は目覚ましく、熱心なファンも初心者層も、映画館のゆったりとした座席で字幕付きのオペラを楽しめるようになった。この方式なら、好きな歌手の熱演ぶりを大画面で眺められ、馴染みのない演目でも肩の力を抜いて鑑賞できる。オペラに気軽に親しむ場として、日本でも人気の高いオペラ・エンターテインメントである。
 それでは、2018年秋からの新シーズンのラインナップより、今回は前半の5演目をご紹介。まずは、ヴェルディの大作《アイーダ》。長年愛される豪華なステージングにこのたび登場するのは、オペラ界一の大スター、アンナ・ネトレプコである。際立つ美貌に加えて、メロディをひたむきに歌い上げる“格別の熱意”も彼女の魅力だろう。亡国の王女として奴隷に身をやつし、エジプト将軍との愛だけを頼りに生きるアイーダの悲しさを、ネトレプコの歌声が深く掘り下げるさまに注目して欲しい。
 続いて、“神殿大崩壊”の大詰めが演出家の腕の見せどころになる、サン=サーンスの《サムソンとデリラ》を。こちらはトニー賞受賞のダルコ・トレズニヤックの新演出なので、一瞬のスペクタクルに賭ける情熱のほどをまずはじっくり眺めたい。なお、今回はフランスの大スター、ロベルト・アラーニャが怪力無双の男サムソンを演じ、オペラ界一のクール・ビューティ、エリーナ・ガランチャがデリラ役に挑戦するという。知的なメゾソプラノが蠱惑(こわく)的な旋律美をどのように歌い上げるか、ファンには逃せぬ好機である。
 そして、もう一つ新演出の舞台として、ヴェルディの人気作《椿姫》を。先述のネゼ=セガンが指揮台に立ち、主役のカップルは、銀色の美声を誇るドイツの名花ディアナ・ダムラウと、声音の燦めきが著しいペルー人テノール、フアン・ディエゴ・フローレスというから、これまた見逃せない。両者ともに、普段のレパートリーから一歩踏み込んで、重めの役柄に挑むことになるが、その二人を、“ブロードウェイの鬼才”たる演出家マイケル・メイヤーがどう活かすのか。挑戦的なプロダクションが期待できそうだ。
 このほか、同じメイヤーの演出で現代オペラの《マーニー》(作曲:ニコ・ミューリー)がMET初披露に。ヒッチコックも映画化した題材だけに、スリリングな内容が関心を呼んでいる。また、キング・オブ・テノールのヨナス・カウフマンが出演するジャンカルロ・デル・モナコの人間愛溢れる名演出、《西部の娘》(プッチーニ)も上映予定。様々なオペラに“踏み込む”チャンスをぜひ逃さずに!
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2018年11月号より)

METライブビューイング2018-19は11/2(金)より東劇、新宿ピカデリー他、全国19館にて上映開始。
詳細は下記ウェブサイトをご覧ください。
http://www.shochiku.co.jp/met/

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