【CD】双子素数/低音デュオ

 松平敬と橋本晋哉による異彩を放つユニット「低音デュオ」約3年ぶりの新譜もまた「斜め上」から攻めて来る。1曲目の徳永崇「感情ポリフォニー」からしていきなりホーミー歌唱が登場して面食らうが、収録曲全6曲共に声/バリトン+テューバ&セルパンといった“地味な”編成から驚くほどに多彩な音響と世界観を現出させている。先述曲では特異な音響と複雑なテキスト朗読(朗唱)のポリフォニーを、川上統「児童鯨」ではその名の通りその鳴き声を、木下正道の「双子素数Ⅰ」では言葉の意味作用と数理的に形成された旋律とのせめぎ合いを聴く。ともかく聴いていただくしかない。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2018年10月号より)

【information】
CD『双子素数/低音デュオ』

徳永崇:感情ポリフォニー/湯浅譲二:ジョルジオ・デ・キリコ/山本和智:高音化低音/高橋悠治:明日も残骸 しいんと ぼうふらに摑まって/川上統:児童鯨/木下正道:双子素数Ⅰ

低音デュオ【松平 敬(声/バリトン) 橋本晋哉(テューバ/セルパン)】

コジマ録音
ALCD-118 ¥2800+税