ドイツ仕込みの深く柔らかな低弦ワールド
「コントラバスでもこんなに表情豊かな音楽が奏でられる! そんな思いを味わって欲しい」との訴えに心が動く。日常耳にしないコントラバスのソロ。東京オペラシティの人気シリーズ《B→C》でも8年ぶりというから聴き逃せない。主役は幣隆太朗。東京芸大在学中にドイツ・ヴュルツブルク音大へ留学し、ベルリン・シュターツカペレのアカデミー生を経て、2007年からシュトゥットガルト放送響の奏者として活躍する名手だ。プログラムも興味津々。基本となるバッハのガンバ・ソナタ、貴重なソロ曲=ヒンデミットのソナタ、チェロとは違った深い響きに挑むブラームスのチェロ・ソナタ第1番(低音重視の曲ゆえ大注目!)が並ぶ。そんなドイツのクラシックものの間に、最低弦からBACH音型で展開するズビンデン、細やかな表現や響きが魅力の西田由美子作品、民俗音楽をモチーフにしたタバコフの人気曲、雄大なフィンランドの情景が目に浮かぶハウタ=アホ作品と続く現代オリジナル曲が挟まれる。この楽器だけがもつ柔らかく美しい低音に浸り切る稀少な一夜!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年9月号から)
★9月10日(火)・東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
http://www.operacity.jp