「四神」は音域の違う4種のオーボエ属楽器を楽章ごとに吹き分けるという、奇想天外のアイディアが聴かれる。四季と結びついた禍々しい神獣を、ヴェテランのオーボエ奏者トーマス・インデアミューレがグリッサンドや微分音程も駆使して描き分ける。「沈黙の秋」では、どこか物悲しい表情を湛えたオーボエがピアノ(岡田博美)と対峙しながら、あやかしの世界へと誘う。いずみシンフォニエッタ大阪の合奏力を前提に書き継がれている室内交響曲も5作目となったが、「転生」と題された本作には新古今和歌集のテクストが断片的に用いられ、緊張感を湛えた持続が耽美と安らぎの世界へと導かれていく。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年10月号より)
【information】
CD『西村朗 四神/インデアミューレ+いずみシンフォニエッタ大阪』
西村朗:オーボエ協奏曲「四神」、沈黙の秋、室内交響曲第5番「リンカネイション[転生]」
トーマス・インデアミューレ(オーボエ) 飯森範親 三ツ橋敬子(以上指揮)いずみシンフォニエッタ大阪 岡田博美(ピアノ) 太田真紀(ソプラノ)
収録:2018年2月&2016年2月、いずみホール(ライヴ)他
カメラータ・トウキョウ
CMCD-28359 ¥2800+税