ポール・メイエ クラリネット・リサイタル

クラリネット界の“ファンタジスタ”に酔いしれる一夜


 人気実力ともに世界最高峰のクラリネット奏者、ポール・メイエ。来日公演も多く、これまでに幾度となく名演を聴かせてくれているが、この秋、日本では4年ぶりとなるリサイタルを開く。そんなに久しぶりのリサイタルだということに驚くが、思い出してみれば近年は協奏曲のソリストとして、あるいはレ・ヴァン・フランセの一員としての来日が続いていた。スーパースターの妙技をたっぷりと堪能できる待望の機会が到来する。共演はピアノの山田武彦。以前の共演で、メイエが「彼とならどんな曲も演奏したい」と絶大な信頼を寄せた実力者である。
 プログラムも意欲的だ。中心はロマン派のドイツ音楽。クラリネットのために書かれた貴重な傑作であるシューマンの「幻想小曲集」、水の精と騎士の悲恋物語に着想を得たライネッケのフルート・ソナタ「ウンディーネ」(作曲者自身によるクラリネット編曲版)、山田武彦がリヒャルト・シュトラウスの大管弦楽曲を編曲した「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、そしてウェーバーの協奏的大二重奏曲。ウェーバー作品ではクラリネットとピアノがともに名技性を競い合う。胸のすくような鮮やかな技巧を楽しみたい。
 よみうり大手町ホールの約500席からなる親密な空間でメイエを聴けるのも大きな魅力だ。ふたりの奏者の音楽による対話のおもしろさを存分に体感できることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年10月号より)

2018.10/30(火)19:00 よみうり大手町ホール
問:読売新聞東京本社文化事業部03-3216-8500 
http://info.yomiuri.co.jp/event/music/

他公演
2018.10/26(金)静岡音楽館AOI(054-251-2200)