ユーリ・バシュメット(指揮・ヴィオラ) & モスクワ・ソロイスツ

名匠率いる精鋭集団が織り成す武満サウンドとロシアの傑作


 ヴィオラといえばユーリ・バシュメットだ。彼はヴィオラをソロ楽器として世界に知らしめ、1992年には若手実力派を集めて世界最高峰の弦楽アンサンブルと称されるモスクワ・ソロイスツを結成した。その精鋭集団が、得意とするチャイコフスキーの「ヴィオラと弦楽合奏のための『夜想曲』」「弦楽セレナーデ」で聴き手をロシアの地へといざなう。
 バシュメットは生前の武満徹と親交を深め、現在もその作品を愛奏している。今回は映画音楽の分野でも名曲を生み出した武満の「弦楽のための3つの映画音楽」からスタート。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番へとつなげ、ここには6歳からロシアで学び、現在はモスクワ音楽院で研鑽を積んでいる松田華音(ピアノ)と高橋敦(トランペット、東京都交響楽団首席奏者)がソリストとして参加する。この作品は弦楽合奏とピアノとトランペットが各々の旋律を劇的にうたい上げ、緊張感、悲劇的、瞑想的な面を浮き彫りにする。ショスタコーヴィチが27歳のときに書いた表現力豊かなコンチェルトである。とりわけ終楽章のトランペットの独奏と、ピアノのカデンツァに注目したい。
 後半のチャイコフスキーはモスクワ・ソロイスツの真骨頂。バシュメットの深々とうたうヴィオラと弦楽アンサンブルがフル・オーケストラに匹敵する存在感を発揮する。ロシア民謡の主題が見え隠れする「弦楽セレナーデ」は、郷愁と哀愁と民族色が心に響く。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2018年10月号より)

2018.10/3(水)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp/
※バシュメット & モスクワ・ソロイスツの全国公演(福岡・大阪・東京・青森)の詳細については上記ウェブサイトでご確認ください。