Chopin Schumann Liszt 三大作曲家の愛と葛藤(後編) 田崎悦子(ピアノ)

ロマン派3人の切なる想いを伝えたい


 演奏とは、作品を通して作曲家と対話すること―それを心から実感させてくれるピアニストが田崎悦子である。発する音はもはや楽器の“音”を超越し、“声”として聴衆の心へと直接届いてくる。この境地に達するまで、彼女は血のにじむような思いで音楽と向き合ってきたにちがいない。
 3年前に3回シリーズで開催された「三大作曲家の遺言」で、彼女自身の遺言なのでは、と思わせるほどのものを聴衆に提示してくれた。田崎はそれを終え、「私の人生にもピリオドを打ち、うろうろしていたころ、天から“指名”が来て」開始したのが2回シリーズによる『三大作曲家の愛と葛藤』である。ショパン、シューマン、リストという、ほぼ同世代を生きた三人の、若く充実した時期、心から愛し、葛藤して生み出された作品が演奏される。
 5月の前編ではすべての旋律に言葉を、リズムには鼓動をのせてショパンの「幻想ポロネーズ」、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」、そしてリストの「ソナタ ロ短調」という大曲3つから、溢れるメッセージを代弁してくれた。
 10月の後編では、ショパンの“詩”である遺作のノクターンや“魂”であるマズルカ、シューマンのクララへの愛が込められた「クライスレリアーナ」、そしてリストが自身の人生はもちろん、音楽家としても新たな局面に立った作品である「巡礼の年第2年イタリア」(全曲)が並ぶ。心からの愛をもって作品と対峙する田崎だからこそ伝えられる、作曲家たちの本当の想いをぜひ感じてほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年10月号より)

2018.10/13(土)14:00 東京文化会館(小)
問:カメラータ・トウキョウ03-5790-5560 
http://www.camerata.co.jp/

他公演
2018.9/23(日・祝)京都/青山音楽記念館 バロックザール(075-393-0011)