開幕を4日後に控えた9月5日、ローマ歌劇場日本公演の記者会見が開催された。芸術監督のアレッシオ・ウラッド、《椿姫》指揮者のヤデル・ビニャミーニ、ヴィオレッタ役のフランチェスカ・ドット、アルフレード役のアントニオ・ポーリ、《マノン・レスコー》指揮者のドナート・レンツェッティ、演出家のキアラ・ムーティ、待望の初来日となったマノン役のクリスティーネ・オポライスが登壇(写真左から4人目は合唱監督のロベルト・ガッビアーニ)。
「イタリア・オペラの伝統をより良い方法で継承していくことが、ローマ歌劇場の使命と考えています」とウラッド芸術監督。今回の2作、偉大なデザイナー、ヴァレンティノ・ガラヴァーニとのコラボレーションが実現した《椿姫》、キアラ・ムーティが伝統を守りながら感性を発揮した《マノン・レスコー》は、こうした理念における成功作であると語った。
マエストロ・レンツェッティが《マノン・レスコー》を「オーケストレーションもモダンですが、内容的に現代に近い愛の物語です」と紹介。演出家キアラ・ムーティは、同じ題材からつくられたマスネとプッチーニのオペラにおける最大の違いは、マノンがイタリア人かフランス人かだ、と話を始めた。「マスネのマノンは、いわば華やかなフランス舞曲に囲まれた性悪女、プッチーニの方は非常に悲劇的で、彼女自身が自分の宿命を悟っているような人物として描かれています。そこから、私は演出にあたってマノンが最後に死んでいく砂漠を重要なモティーフとして考えました」。そしてヒロインを演じるオポライスについて「女優であることを大切にしている素晴らしい歌手!」と称賛。マイクを受け継いだオポライスは、「マノンという女性は愛と富の両方を手に入れたかった。この気持ちは誰にでもあるかもしれないけれど実現することは難しい。マノンもそれを理解しますが、すでに時遅く、死を迎えるのです」。マイクが次に渡りそうになったところで「とても重要なことを言い忘れたわ!」と再びマイクをとり「キアラはすべてを理解していて、一つひとつの場面をとても丁寧に捉えています。キアラに恋をしてしまいそうなほどです」と、このプロダクションで歌う喜びを語った。
会見ではこの後、《椿姫》の出演者たちが作品の魅力と意気込みを語り、予定の1時間を30分余りオーバーして終了した。
取材・文:吉羽尋子
日本舞台芸術振興会
http://www.nbs.or.jp/