徒らに奇を衒うことはせず、ただし音楽的には果敢に大胆に。反田恭平の弾くベートーヴェンの“3大ソナタ”は、現代人の胸に熱く響く一枚だ。遠くの地鳴りのようなトレモロが印象的な1楽章から、抑制美の効いた2楽章への移行がホロリとさせる「悲愴」、モダン・ピアノの音の伸びの良さと残響を生かし切った「月光」、冒頭の三音のモティーフから強烈に惹きつけ、強弱表現のレンジが極めて豊かな「熱情」。歯切れの良いタッチと立体的な曲想の変化に富む「32の変奏曲」にも、反田の時代様式への真摯な眼差しと、現代に生きる者としての熱い息吹が感じられる。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年9月号より)
【お詫びと訂正】
ぶらあぼ2018年9月号(8/18発行)の「New Release Selection」178ページに掲載しましたCD『悲愴・月光・熱情〜リサイタル・ピース第2集』/反田恭平の記事で、執筆者のお名前に誤りがございました。
お詫びし訂正いたします。
【information】
CD『悲愴・月光・熱情〜リサイタル・ピース第2集/反田恭平』
ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲、ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第14番「月光」・第23番「熱情」
反田恭平(ピアノ)
日本コロムビア
COCQ-85422 ¥3000+税