【CD】影からの音たち 橋本京子プレイズ W.A.モーツァルト

 モーツァルトのアルバムというと、プレイヤーにセットした瞬間、底抜けに明るい響きが流れてくるかと思いきや、国際的に信頼の厚いピアニスト橋本京子の新譜はまるで違う。「影からの音たち」と題されたこのCDは、ロンド イ短調、幻想曲 ハ短調、アダージョ ロ短調など、短調のピアノ曲が中心。繊細かつ自然なタッチで、多層的で陰影の深いモーツァルトの悲しみを表出する。橋本の音楽には、恐るべき叙情性がありながら、感傷的になりすぎない抑制美もあり、それがさらに“影”を感じさせる。短調作品の中に配置されたソナタ第2番へ長調の眩しさも引き立つ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年7月号より)

【information】
CD『影からの音たち 橋本京子プレイズ W.A.モーツァルト』

モーツァルト:ロンド イ短調K.511、幻想曲ハ短調K.396(補完:M.シュタッドラー)、ピアノ・ソナタ第2番K.280、幻想曲ニ短調K.397(補完:伝A.E.ミューラー)、アダージョ ロ短調K.540、幻想曲ハ短調K.475、アレグロ ト短調K.312(590d)(補完:R.
レヴィン) 他

橋本京子(ピアノ)

ナミ・レコード
WWCC-7874 ¥2500+税