イタリアに捧げるロマンと情熱
「オペラにデビューしてから今年で20年です!」と朗らかに語るテノール、村上敏明。藤原歌劇団が誇るプリモ・ウォーモ(主役男性歌手)の彼が、このほど、“イタリアの景色”を音で綴るCD『ヴィヴァ・イタリア!』を世に送ることに。人気のオペラ・アリアからポピュラーなカンツォーネまで、熱く豊かな歌いぶりが耳を捉えて離さない。
「今回のアルバムは、全曲ともイタリア語の歌でまとめました。国立音大を卒業して藤原歌劇団の研究生になり、1998年からプロとして本格的に活動を開始しましたが、その頃から今日まで一貫して柱になっているのは、やはりイタリアのレパートリーになります。前半は歌曲やカンツォーネなど親しみやすいメロディでまとめ、後半はオペラ・アリアを8曲入れてみました」
村上の輝かしい歌声が詰まったこの一枚、早速聴いてみると、磨き抜かれたフレージングどれもが素晴らしい。晴れやかな〈ヴォラーレ〉、熱く盛り上がる〈タイム・トゥ・セイ・グッバイ〉、ひときわ逞しい〈清きアイーダ〉〜《アイーダ》、ハイC音が朗々と鳴りわたる〈見よ、あの恐ろしい炎を〉〜《イル・トロヴァトーレ》など、歌曲でもアリアでも、息づかいが飛び切りの雄弁さを誇っている。
「ありがとうございます! “ハイC”は皆さまが喜んで下さるので、録音でもしっかり入れたいなと。以前は楽に出せない時期もありましたが、往年の大テノール、ジャンニ・ライモンディさんの教えを受けたその日から、この音を安定して響かせられるようになりました。たった一度、2時間のレッスンで上手くできたので、僕も嬉しかったけれど、ライモンディさんも、もの凄く喜んで下さって…。人の縁ってありがたいなと思いました」
国内では名教師・中島基晴の薫陶を受けた村上。海外の大歌手との数多い共演経験も、歌声を磨く一助になっている。
「僕の持ち声はいま、リリコ(抒情的)からスピント(力強い)に移りつつあるのですが、20代の頃よりも今の響きの方が様々な曲を歌いやすくなっていると実感しています。ですので、今回は《リゴレット》の軽やかな〈女心の歌〉から、《道化師》の重厚な〈衣装をつけろ〉や《トゥーランドット》のヒロイックな〈誰も寝てはならぬ〉も録音してみました。今年、オペラでは《トスカ》が続きますが、その傍ら、新盤リリースの記念イベントとして、7月31日のコンサートも決まりました。CDと同じくピアノ、ヴァイオリンそれにマンドリンの皆さんとの共演という贅沢なステージです。ぜひご注目下さい!」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2018年7月号より)
テノール 村上敏明 デビュー20周年アルバム 発売記念リサイタル
Viva Italia!
2018.7/31(火)14:00 Hakuju Hall
問:日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874
http://www.jof.or.jp/
CD
『ヴィヴァ・イタリア! Viva Italia! 』
アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)
MECO-1047(SACDハイブリッド盤)
¥3000+税
2018.6/20(水)発売