【CD】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/ラザレフ&日本フィル

 一般的にロシアの楽団からイメージするのは、足腰の粘りを生かしたパワフルなサウンド、聴き手を酩酊状態に誘う濃厚な歌心などだが、ラザレフのリードする日フィルがこうした特質をいつの間にか手中にしていることに、まず驚いた。スケルツォでは低音が大地をえぐって進撃し、ラルゴのクライマックスでは弦のトレモロがぼこぼこと沸騰しながら旋律に熱量を与える。フィナーレではエンジンが焼き切れる寸前まで加速。だが、実はこれをハードでスリリングなドライブにしているのは、行き届いたフレージングやアーティキュレーションの処理なのだ。厳密なリハで知られるラザレフの面目躍如。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年6月号より)

【information】
CD『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/ラザレフ&日本フィル』

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番

アレクサンドル・ラザレフ(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団

収録:2017年6月、横浜みなとみらいホール(ライヴ) 他
オクタヴィア・レコード
OVCL-00659 ¥3000+税