渡辺健二 ピアノリサイタル

リストが求めた深い精神性を描く

 東京藝術大学教授として長らく後進の指導に情熱を注ぎ、また同時に卓越したリスト弾きとして演奏活動を続けてきた渡辺健二。リスト音楽院留学中、リスト・バルトーク国際コンクールに入賞したことで、ハンガリーゆかりの作曲家を積極的に取り上げてきた。
 今度のリサイタルは、バルトークの「ソナチネ」と「ルーマニア民族舞曲」という親しみやすく美しい小品で幕を開ける。特に楽しみなのは、続けて演奏されるリスト。「バッハのカンタータ『泣き、嘆き、悲しみ、おののき』とロ短調ミサ曲の『十字架につけられ』の通奏低音による変奏曲」や、「詩的で宗教的な調べ」第7曲「葬送」という中期の作品ばかりが並ぶ。リストが深い精神性を求めていった時代の楽曲で、円熟した音楽性を披露してくれることだろう。
 一方のシューマンからは、作曲家若き日の多様な感情が詰まったピアノ・ソナタ第1番を演奏。3人の作曲家それぞれの魅力を巧みに描き分ける手腕を聴く、充実した公演となりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2018年6月号より)

2018.6/8(金)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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