【CD】遠望 ヘルダリーンの詩による歌曲/長島剛子&梅本実

 世紀末から20世紀の歌曲をテーマにリサイタルを重ね、近年ディスクの発表も頻繁に行う長島剛子・梅本実リートデュオ。今回のディスクはヘーゲルやベートーヴェンと同時代の詩人フリードリヒ・ヘルダリーン(1770〜1843)の詩に付曲された歌曲を集めたもので、深い精神性に満ちたこれらの作品で、長島は色彩豊かに変化する美声を駆使して詩の世界観を気高く伝える。とりわけミュラー=ジーメンスによる「遠望」における内なる対話の表現が素晴らしい。梅本のピアノは時に劇的に長島を急き立てるかと思えば、声の響きを拡張するように寄り添い、絶妙なバランスでアンサンブルを構築している。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年5月号より)

【information】
CD『遠望 ヘルダリーンの詩による歌曲/長島剛子&梅本実』

ロイター:フリードリヒ・ヘルダリーンの詩による3つの歌曲
フォルトナー:沈みゆくがよい、美しき太陽よ
ブリテン:6つのヘルダリーン断章
リゲティ:夏
リーム:人生の半ば
ウルマン:夕べの幻想
ヒンデミット:断章、夕べの幻想
ミュラー=ジーメンス:遠望

長島剛子(ソプラノ)
梅本実(ピアノ)

録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9014 ¥2800+税